2019年2月20日に厚生労働省薬食審再生医療等製品・生物由来技術部会が開催され、CAR-T細胞療法である「キムリア点滴静注」(一般名:tisagenlecleucel/チサゲンレクルユーセル)について「再発または難治性びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)」並びに「再発または難治性のCD19陽性のB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)」を対象として、承認が了承されましたのでお知らせいたします。

この後、医薬品医療機器等法に基づいて正式に承認された後に、厚生労働省が薬価の算定原案を策定します。算定原案は、厚生労働省中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価算定組織によって検討され、中医協において薬価が了承されて薬価収載された後に、販売となります。

CAR-T細胞療法とは、キメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor、略称:CAR)-T細胞療法の略であり、患者さんの血液からT細胞を採取し、細胞処理施設でT細胞の遺伝子改変を行い、がんを攻撃する能力を高めます。この遺伝子改変されたT細胞(CAR-T細胞)を患者さんの身体に輸注して戻すと、標的タンパクを発現する細胞を特異的に攻撃するようになります。

【参考動画】CAR T-Cell Therapy: How Does It Work?(米国ダナファーバーがん研究所)

医学誌「The New England Journal of Medicine」に掲載された、成人の再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を対象としたCAR-T細胞療法の国際共同臨床試験に関する論文(Tisagenlecleucel in Adult Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma)では、対象となった患者さんに対する全奏功率は52%(完全寛解率は40%、部分奏功率は12%)でした。奏功した患者さんでは、12ヶ月時点での無再発生存率は65%(完全奏功した患者さんでは、12ヶ月時点での無再発生存率は79%)でした。

1回の投与で、場合によっては完全寛解や治癒が期待できる可能性のある治療ですが、一方で「サイトカイン放出症候群」などの重篤な副作用が生じる場合もあり、副作用への対処のために集中治療室での治療が必要となる場合もあります。国内承認後は、限られた施設での少数の患者さんを対象として、当初は治療が開始となることが見込まれています。

なお、2月20日に厚生労働省薬食審再生医療等製品・生物由来技術部会での承認の了承にあたり、グループ・ネクサス・ジャパンの天野慎介理事長が「NHKニュース」「フジテレビプライムニュース」などでインタビュー取材に応じました。対象となる患者さんが長らく切望してきたCAR-T細胞療法が、1日も早く患者さんが使えるよう期待しています。

NHKニュース「最新のがん免疫治療CAR-T細胞療法国が承認へ」(2019年2月20日)

▲NHKニュース「最新のがん免疫治療CAR-T細胞療法国が承認へ」(2019年2月20日)

NHKニュース「最新のがん免疫治療CAR-T細胞療法国が承認へ」(2019年2月20日)

▲NHKニュース「最新のがん免疫治療CAR-T細胞療法国が承認へ」(2019年2月20日)