一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパンと小児脳腫瘍の会は、平成31年4月5日付で「メソトレキセートの出荷調整並びに欠品に関する要望書」を厚生労働大臣、厚生労働省医薬・生活衛生局長、厚生労働省医薬品審査管理課課長、独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長、ファイザー株式会社代表取締役社長に提出・送付いたしましたので、ご報告いたします。

メソトレキセートの出荷調整並びに欠品に関する要望書

▲メソトレキセートの出荷調整並びに欠品に関する要望書

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平成31年4月5日

厚生労働大臣 根本 匠 様
厚生労働省医薬・生活衛生局長 宮本 真司 様
厚生労働省医薬品審査管理課課長 山本 史 様
独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長 藤原 康弘 様
ファイザー株式会社代表取締役社長 原田 明久 様

一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン理事長 天野 慎介
小児脳腫瘍の会代表 馬上 祐子

メソトレキセートの出荷調整並びに欠品に関する要望書

平素よりがん医療の向上にご尽力をいただき、患者団体の立場より御礼申し上げます。一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパンは、血液がんであるリンパ腫の患者や家族に適切な医療情報や交流の場を提供するとともに、患者や家族の医療環境を向上するための調査研究や政策提言などを行う全国患者団体です。小児脳腫瘍の会は、脳腫瘍と闘う子ども達とその家族の患者会として、患児家族の生活の質(QOL)の向上、より良い療養環境や心のケア、情報の共有などを掲げて活動する全国患者団体です。

メソトレキセート(一般名:メトトレキサート)は添付文書において、メトトレキサート・ロイコボリン救援療法として「肉腫(骨肉腫、軟部肉腫等)」「急性白血病の中枢神経系及び睾丸への浸潤に対する寛解」「悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤に対する寛解」を効能・効果として国内承認されています。上記いずれの疾患の治療においても重要な薬剤であり、特に大量に急速点滴静注投与することで血液脳関門(BBB)を透過することから、脳腫瘍や中枢神経系原発悪性リンパ腫などの治療を行う際には、必要不可欠な薬剤です。

同薬剤は、ファイザー株式会社のドイツの工場で薬剤充填済みのバイアル製品を製造し、日本国内の工場で検査と包装を行ってきたところ、ドイツの工場の定期検査において無菌性の保証に問題が生じ、出荷保留や出荷調整が行われるとの報道が2019年3月にありました。その後ファイザー株式会社からは、医療機関や関連学会等に対して「メソトレキセート点滴静注液1000㎎一時出荷保留、同200㎎、注射用メソトレキセート50㎎出荷調整のご案内」などの案内文が3月より順次発出され、最新の第5報(2019年4月)では、「メソトレキセート点滴静注液1000㎎」については「出荷調整」、「メソトレキセート点滴静注液200㎎」については「4月4日より供給再開」、「注射用メソトレキセート50㎎」については「4月16日より供給再開」、「注射用メソトレキセート5㎎」については「出荷調整」とされています。

現場では、「大量メソトレキセート療法の優先度の高い、リンパ腫、高リスク急性リンパ性白血病(ALL)、髄芽腫など一部の脳腫瘍の患者に対して優先的に使用し、低リスクALLの患者に対しては低用量メソトレキセート療法で代替する、急性骨髄性白血病(AML)の患者に対する髄注では省く」「複数の患者で共有・投与日を合わせる」などの対応をせざるを得なくなるなど、すでに患者の治療に影響が出ており、特に大量メソトレキセート療法が標準治療の重要な部分を占める骨肉腫などの患者にとっては死活問題となり得ます。また、ファイザー株式会社から医療機関や関連学会等に対しての情報提供は行われていますが、ファイザー株式会社ホームページでの情報提供は行われていません。

以上の状況に鑑み、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、ファイザー株式会社に対して以下の要望を行います。

◯ファイザー株式会社がドイツの工場以外で製造している同等製品について、国内への緊急輸入を認めること。
◯国内の各医療機関での在庫状況等を把握し、必要な患者に対して速やかに同薬剤が届くようにすること。
◯厚生労働省やファイザー株式会社ホームページ等を通じて、最新の対応状況を広く一般に公開すること。

以上