2018年6月18日午前7時58分ごろ、大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震が発生しました。地震により亡くなられた皆さま、被災された皆さまに謹んでお見舞い申しあげますとともに、被災地の患者やご家族の皆さまのご無事を、心よりお祈り申し上げます。
2011年3月に発生した東日本大震災の際に、被災された血液がん患者さん(リンパ腫・白血病など)が注意すべき事項について、森勇一先生(佐久医療センター血液内科)から貴重な情報提供をいただきました。このたびの大阪府北部を震源とする地震に際して、森先生より改めて公開する許諾をいただきましたので掲載いたします。森先生のご協力に、心より感謝申し上げます。
- 慢性骨髄性白血病の薬(グリベック=イマチニブ、タシグナ、スプリセル、ボシュリフ)は継続が望ましいですが、手に入らなければ減薬・休薬は可能です。1日1~2錠で細く長く続けるのが良いと思います。慢性骨髄性白血病なら、再燃しても内服を再開すれば再度寛解にできる可能性が高いです。フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病はやや難しいですが原則は同じです。
- 免疫抑制剤も同量で継続が望ましいです。手に入らない場合は、急に中断するよりは、減量してでも細く長く続ける方が病状の悪化は少ないと思います。とはいえ、同種移植後GVHDや拒絶反応だと、2割以上の減量は避けたいところです。優先的に医療にアクセスしていただくべきと考えます。
- リンパ腫や白血病への抗がん剤をどうするかは、病状により大きく異なります。治療を行っている医療機関と相談できるなら、個々に相談したほうが良いです。医療機関にアクセス出来ないときは、原則的には中断が良いと思いますが、リンパ腫・白血病悪化のリスクと背中合わせになるのが難しいところです。
- 抗がん剤や免疫抑制剤を使用中の方は、被災後の後片付けで屋外に出るのは避けたほうが良いです。木材の中のカビ(アスペルギルス)を吸い込んで難治性の肺炎になったり、怪我をしたときに土中の嫌気性菌で重症感染を起こしたりする危険があるからです。
- 抗がん剤・免疫抑制剤・副腎皮質ホルモン剤を使用中で、避難所で生活している方は、ウィルス感染予防のため、マスクがあればマスクをしてください。発熱した場合、抗がん剤は直ちに中断すべき(腫瘍熱の可能性は残りますが…)ですが、免疫抑制剤と副腎皮質ホルモン剤は、急に中断しないでください。
- 骨髄抑制期の注意。人ごみではマスクを。食べ物は悪くなったものは避けて。屋外作業も避ける。38度以上の発熱時は抗生剤使用が望ましいです。点滴可能なら抗緑膿菌性のペニシリンかセフェムを極量。不可能ならクラビットなどキノロン系経口剤を。オーグメンチンが追加出来ればなお良いです。