一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパンと小児脳腫瘍の会は「メソトレキセート」(一般名:メトトレキサート、略称:MTX)について、2019年4月5日付で「ファイザー株式会社がドイツの工場以外で製造している同等製品について、国内への緊急輸入を認めること」などを求める「メソトレキセートの出荷調整並びに欠品に関する要望書」を厚生労働大臣、厚生労働省医薬・生活衛生局長、厚生労働省医薬品審査管理課課長、独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長、ファイザー株式会社代表取締役社長に提出・送付しておりました。これに受けて、オーストラリアで米国向けに製造されているメソトレキセートの1000mg製剤を緊急に日本国内に輸入することを目的として、4月19日に「医療用医薬品の一部変更承認申請」(いわゆる一変申請)が行われていましたが、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による迅速審査を経て一変申請が承認され、5月23日より国内への供給が開始される見込みとなりましたので、お知らせいたします。当法人からの要望書を受けて、国内への緊急輸入と一変申請に尽力いただいた関係の皆さまに、この場をお借りして御礼申し上げます。
なお、5月23日より国内への供給が開始されるものの、「現時点では安定供給できる在庫数量を確保していないことから、関係卸様には引き続き出荷調整を継続」とのことであり、安定供給までには引き続き期間が必要とされることから、当法人としましても安定供給に至るまで、引き続き状況を注視し、要望等を続けてまいります。以下、5月20日に医療関係者向けにファイザー株式会社より発出された「メソトレキセート点滴静注液1000mg米国向け製品の供給のご案内(第8報)」並びに、4月5日付「メソトレキセートの出荷調整並びに欠品に関する要望書」を示します。
——————–
2019年5月
医療関係者各位
ファイザー株式会社代表取締役社長
原田 明久
「メソトレキセート点滴静注液1000mg米国向け製品の供給のご案内(第8報)」
謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は弊社並びに弊社製品に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
2019年2月末より、メソトレキセート注射剤の供給につきましては大変ご迷惑をおかけし、心よりお詫び申し上げます。
本供給問題の発生以降、メソトレキセート注射剤の重要性から、関連学会様または関係患者会様より厚生労働省及び弊社に対し海外向け製品の緊急輸入についてご要望をいただいておりました。これらの要望を踏まえ、海外委託製造所(ドイツ)以外で製造しているメソトレキセート注射剤の国内での製造販売の可能性について、厚生労働省と共に検討を進めてまいりました。その結果、米国向けに製造された日本の規格に合致する1000mg製剤(以下、米国向け1000mg製剤)を緊急に国内に供給する目的で、4月19日に米国向け1000mg製剤を製造している海外製造所(オーストラリア)及び製造方法を追加する薬事手続き(承認事項一部変更承認申請)を行いました。この度、医薬品医療機器総合機構における迅速な審査を経て、厚生労働大臣より、当該申請の承認が得られましたので、米国向け1000mg製剤について、5月23日より国内への供給を開始する予定です。米国向け1000mg製剤の詳細につきましては、別途公表している「米国向け製品の一時的な流通のご案内」をご確認ください。
今後、下記の製造番号を順次出荷する予定ですが、現時点では安定供給できる在庫数量を確保していないことから、関係卸様には引き続き出荷調整を継続させていただきますことをご了承ください。今後のメソトレキセート注射剤の納入に関しましては、引き続き関係卸様とご相談いただき、患者様への今後の治療についてご判断いただきますよう、何卒お願い申し上げます。
製薬会社としての重要な使命であります医薬品の安定供給が確保できず、医療関係者の皆様、患者様に多大なご迷惑をお掛けすることとなり、改めて心より深くお詫び申し上げます。何卒事情をご検察の上、ご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
謹白
——————–
平成31年4月5日
厚生労働大臣 根本 匠 様
厚生労働省医薬・生活衛生局長 宮本 真司 様
厚生労働省医薬品審査管理課課長 山本 史 様
独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長 藤原 康弘 様
ファイザー株式会社代表取締役社長 原田 明久 様
一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン理事長 天野 慎介
小児脳腫瘍の会代表 馬上 祐子
メソトレキセートの出荷調整並びに欠品に関する要望書
平素よりがん医療の向上にご尽力をいただき、患者団体の立場より御礼申し上げます。一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパンは、血液がんであるリンパ腫の患者や家族に適切な医療情報や交流の場を提供するとともに、患者や家族の医療環境を向上するための調査研究や政策提言などを行う全国患者団体です。小児脳腫瘍の会は、脳腫瘍と闘う子ども達とその家族の患者会として、患児家族の生活の質(QOL)の向上、より良い療養環境や心のケア、情報の共有などを掲げて活動する全国患者団体です。
メソトレキセート(一般名:メトトレキサート)は添付文書において、メトトレキサート・ロイコボリン救援療法として「肉腫(骨肉腫、軟部肉腫等)」「急性白血病の中枢神経系及び睾丸への浸潤に対する寛解」「悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤に対する寛解」を効能・効果として国内承認されています。上記いずれの疾患の治療においても重要な薬剤であり、特に大量に急速点滴静注投与することで血液脳関門(BBB)を透過することから、脳腫瘍や中枢神経系原発悪性リンパ腫などの治療を行う際には、必要不可欠な薬剤です。
同薬剤は、ファイザー株式会社のドイツの工場で薬剤充填済みのバイアル製品を製造し、日本国内の工場で検査と包装を行ってきたところ、ドイツの工場の定期検査において無菌性の保証に問題が生じ、出荷保留や出荷調整が行われるとの報道が2019年3月にありました。その後ファイザー株式会社からは、医療機関や関連学会等に対して「メソトレキセート点滴静注液1000㎎一時出荷保留、同200㎎、注射用メソトレキセート50㎎出荷調整のご案内」などの案内文が3月より順次発出され、最新の第5報(2019年4月)では、「メソトレキセート点滴静注液1000㎎」については「出荷調整」、「メソトレキセート点滴静注液200㎎」については「4月4日より供給再開」、「注射用メソトレキセート50㎎」については「4月16日より供給再開」、「注射用メソトレキセート5㎎」については「出荷調整」とされています。
現場では、「大量メソトレキセート療法の優先度の高い、リンパ腫、高リスク急性リンパ性白血病(ALL)、髄芽腫など一部の脳腫瘍の患者に対して優先的に使用し、低リスクALLの患者に対しては低用量メソトレキセート療法で代替する、急性骨髄性白血病(AML)の患者に対する髄注では省く」「複数の患者で共有・投与日を合わせる」などの対応をせざるを得なくなるなど、すでに患者の治療に影響が出ており、特に大量メソトレキセート療法が標準治療の重要な部分を占める骨肉腫などの患者にとっては死活問題となり得ます。また、ファイザー株式会社から医療機関や関連学会等に対しての情報提供は行われていますが、ファイザー株式会社ホームページでの情報提供は行われていません。
以上の状況に鑑み、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、ファイザー株式会社に対して以下の要望を行います。
記
◯ファイザー株式会社がドイツの工場以外で製造している同等製品について、国内への緊急輸入を認めること。
◯国内の各医療機関での在庫状況等を把握し、必要な患者に対して速やかに同薬剤が届くようにすること。
◯厚生労働省やファイザー株式会社ホームページ等を通じて、最新の対応状況を広く一般に公開すること。
以上