グループ・ネクサス・ジャパンを含むがん患者団体は連名にて、厚生労働大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革担当)、国会議員の皆様などに対して、「選択療養制度(仮称)の創設に関する要望書」を、4月15日付で提出しましたので、ご報告いたします。

——————–

平成26年4月15日

厚生労働大臣 田村憲久様
内閣府特命担当大臣 稲田朋美様
国会議員の皆様

がん患者団体有志一同

「選択療養制度(仮称)」の創設に関する要望書

平素よりがん対策の推進にご尽力をいただき、がん患者および家族の立場より御礼を申し上げます。

ご承知の通り、平成26年3月27日に開催された内閣府の規制改革会議において「選択療養制度(仮称)」の創設が提案されました。同制度は「一定の手続やルールに基づき、患者が自己の選択によって保険診療と併せて受ける保険外診療」であり、「患者・医師間の診療契約書を保険者に届け出ることで保険給付が行われるようにする」などとされています。

海外で標準的に用いられている治療薬が日本でも早期に承認されること、いわゆるドラッグ・ラグの解消は、新たな治療薬を求めるがん患者や家族の切なる声であり、がん患者団体はその解消を求める制度改正等を求める要望活動を行ってまいりました。そうした要望に対して、必要な治療薬が早期に承認されるための取り組みや制度改正をしていただき、少しずつ使える治療薬が増えていることに御礼申し上げます。

しかし、新たな治療薬については、科学的根拠に基づいた有効性や安全性の担保が不可欠です。また、日本のいわゆる国民皆保険制度は、がん患者や家族が安心して保険診療に基づくがん治療を受けるためのいわば命綱となるものです。今回提案されている選択療養制度については、科学的根拠に基づく有効性と安全性が担保されない自由診療の放任や、国民皆保険制度のなし崩し的な空洞化につながりかねないと考えられます。私たちがん患者団体有志一同は、以下の要望をいたします。

・有効性や安全性の担保されない自由診療の放任や、国民皆保険制度のなし崩し的な空洞化につながりかねない「選択療養制度(仮称)」の創設に反対します。

・先進医療制度の見直しなど、科学的根拠に基づく有効性と安全性が担保された治療薬が、早期に承認されるための取り組みや制度改正を引き続き行うことを要望します。

・がん患者や家族が安心して保険診療に基づくがん治療を受けられるよう、国民皆保険制度を堅持するための取り組みや制度改正を引き続き行うことを要望します。

以上

がん患者団体有志一同(団体名50音順)

・特定非営利活動法人 AWAがん対策募金 (香留 美菜)
・特定非営利活動法人 GISTERS (西舘 澄人)
・特定非営利活動法人 HOPEプロジェクト (桜井 なおみ)
・1・2の3で温泉に入る会ぐんま (佐藤 宮子)
・アイビー千葉(乳がん体験者の会) (齋藤 とし子)
・秋田県がん患者団体連絡協議会「きぼうの虹」 (三浦 惠子)
・あけぼの岐阜 (橋渡 智美)
・特定非営利活動法人 愛媛がんサポートおれんじの会 (松本 陽子)
・沖縄県がん患者会連合会 (田名 勉)
・特定非営利活動法人 がんサポートかごしま (三好 綾)
・がん体験者の会とま~れ (佐々木 佐久子)
・特定非営利活動法人 がんと共に生きる会 (佐藤 愛子)
・ガンフレンド (勢井 啓介)
・一般社団法人 グループ・ネクサス・ジャパン (天野 慎介)
・一般社団法人 高知がん患者支援推進協議会 (安岡 佑莉子)
・サバイバーナースの会「ぴあナース」 (上原 弘美)
・精巣腫瘍患者友の会 (改發 厚)
・千葉・在宅ケア市民ネットワークピュア (藤田 敦子)
・奈良県のホスピスとがん医療をすすめる会 (馬詰 真一郎)
・特定非営利活動法人 乳がん患者友の会きらら (中川 けい)
・特定非営利活動法人 ねむの樹 (金井 弘子)
・特定非営利活動法人 パンキャンジャパン (眞島 善幸)
・特定非営利活動法人 ブーゲンビリア (内田 絵子)
・特定非営利活動法人 ミーネット (花井 美紀)
・ゆうかぎの会 (真栄里 隆代)
・卵巣がん体験者の会スマイリー (片木 美穂)

(4月15日現在賛同団体)

——————–

 

選択療養制度(仮称)の創設について(平成26年3月27日/内閣府規制改革会議)

▲選択療養制度(仮称)の創設について(平成26年3月27日/内閣府規制改革会議)

【関連リンク】

・保険診療と保険外診療の併用療養制度(いわゆる混合診療)
(平成25年11月28日/内閣府規制改革会議)(PDFファイル)

・選択療養制度(仮称)の創設について
(平成26年3月27日/内閣府規制改革会議)(PDFファイル)

・選択療養制度(仮称)の導入は事実上の「混合診療解禁」であり、多くの患者にとっては最先端の医療が受けられなくなる恐れがあり、患者団体の声を聴いていただけるよう要望します
(平成26年4月3日/日本難病・疾病団体協議会)(PDFファイル)

・「選択療養」に対する保険者3団体の見解
(平成26年4月3日/健康保険組合連合会/国民健康保険中央会/全国健康保険協会)(PDFファイル)

・規制改革会議が提言する「選択療養制度(仮称)」について
(平成26年4月9日/日本医師会)(PDFファイル)

【関連記事及び社説・全国紙】

混合診療:実績ない医療は除外…規制改革会議、拡充案
(毎日新聞記事/2014年4月16日)

混合診療解禁 患者の利益になるのか
(朝日新聞社説/2014年4月20日)

混合診療 拡充は患者の選択肢を広げる
(読売新聞社説/2014年4月23日)

混合診療、見えぬ着地点 政府内での対立解けず
(日本経済新聞記事/2014年4月24日)

混合診療の拡大 患者の利益こそ最重要だ
(産経新聞社説/2014年4月28日)

【関連記事及び社説・地方紙】

混合診療拡大 公的保険の理念揺らぐ
(北海道新聞社説/2014年4月30日)

混合診療の拡大 皆保険の維持が前提だ
(東京新聞社説/2014年4月30日)

混合診療 患者の立場で議論を
(信濃毎日新聞社説/2014年4月22日)

混合診療の解禁  安全で公平な医療守れ
(京都新聞社説/2014年4月21日)

混合診療/「皆保険」を維持できるか
(神戸新聞/2014年4月20日)

混合診療 成長戦略になじむのか
(中國新聞/2014年5月1日)

混合診療の拡大案 日本の医療の針路を見失うな
(愛媛新聞社説/2014年4月19日)

【混合診療拡大】拙速は避け、議論尽くせ
(高知新聞社説/2014年4月23日)