既に本日大きく報道され、ご存知の皆様も多いことと存じますが、松方弘樹さんが脳のリンパ腫と診断されたとの発表がありました。
リンパ腫は白血病などと同じ血液のがんであり、化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植(骨髄移植)などの治療が行なわれます。国立がん研究センターがん対策情報センターによる2015年のがん予測罹患者数によりますと、2015年に国内で新たに悪性リンパ腫と診断される推定国内罹患者数は、男性で16,400名(がんの部位別で9位)、女性で13,300名(同8位)、男女合計で29,700名(同9位)とされています。
>>2015年のがん罹患数、死亡数予測(国立がん研究センターがん対策情報センター)
中枢神経系(脳、脊髄、眼球)に発症するリンパ腫は、中枢神経系から発生(原発)した場合と、他のリンパ節で発生したリンパ腫が中枢神経系に転移した場合とに分けることが出来ますが、前者を中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma, PCNSL)といい、脳を原発とするリンパ腫もこれに含まれます。リンパ腫の病理分類は50種類以上に分類され、それぞれで病態や治療が異なります。中枢神経系原発悪性リンパ腫の多くは、病理分類ではびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断されます。
脳は血液脳関門に守られているため、通常の化学療法では薬が到達しないと考えられています。そのため、メトトレキサート(販売名:メソトレキセート)などの化学療法に、放射線療法を併用する治療などが行われていますが、治療の有効性と副作用(特に治療に伴う晩期障害)の軽減を目指した研究が行われ、治療成績が向上しています。病態や治療に関してより詳しい情報は、下記リンク先をご参照ください。
このたび報道された松方弘樹さんをはじめ、今この瞬間も多くの患者さんやそのご家族の皆さまが、リンパ腫と向き合われています。そのお一人お一人のご闘病が、少しでも良い方向に向かうよう、改めて祈念申し上げますとともに、リンパ腫の患者さんやご家族に対する社会の皆さまのご理解とご支援をお願い申し上げます。
>>Yahoo!Japanニュースによる報道(2016年3月2日掲載)
【脳のリンパ腫に関する関連リンク】
>>中枢神経系原発悪性リンパ腫(東京大学医科学研究所附属病院脳腫瘍外科)